学校の中、仕事の中、日々の暮らしの中で「なんて理不尽なのだろう」という気持ちになったことはありませんか?
ネガティブな気持ちを生み出す「理不尽」という出来事も上手に付き合っていくことで人生をより豊かに生きることができるようになります。
そこで今回は理不尽とはどのようなものか、どのような場面で生ずるのか、どのように付き合っていけば良いのかを紹介していきます。
理不尽とは
辞書によると「理不尽」とは
り‐ふじん【理不尽】
〘名・形動〙 物事の筋道が立たないこと。道理に合わないこと。
と記述されています。
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つまり私たちが生活をしている中で直面する様々な出来事の中でも「納得ができない」「自分は悪くないのに」となんとも腑に落ちないような出来事、それが「理不尽」ということになります。 |
理不尽は特別なものじゃない
先ほど定義で見たように、日々の生活の中で私たちが想定していない状況、
例えば…“上司に言われた通りに仕事をこなしたにも関わらず、叱責を受けた”
“落とし物を拾ってあげたにも関わらず、相手に剣幕な表情で睨まれそのまま立ち去さられてしまった”
“贈り物をしたにも関わらず、お礼を言われないどころか受け取ってすらもらえなかった”
このような、自分の想定していた状況と違う状況が生じたときに「理不尽だ」という感覚を抱くわけです。
しかし生来人間は思い通りいかないと違和感を覚える生き物なので、個人が社会との関わりを保ち続ける限り、世の中のどこを見渡してみても理不尽は存在してしまうのです。
理不尽は乗り越えることができる
「社会で生活する限り、理不尽からは逃げられない…」もしそうであれば、私たちは理不尽とどのように付き合っていけば良いのでしょうか?
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理不尽と上手に付き合うには、まずは理不尽が生じるパターンを知ることが第一歩。 |
あなたがこれまで感じてきた理不尽も、実はいくつかのパターンのうちのどれか1つに分類できてしまうのです!
理不尽が生じる対人関係
では具体的にどのような場面で理不尽が生じやすいのでしょうか?
それぞれの場面について見ていきましょう。
会社での理不尽
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上司、部下という上下関係に加えて、様々な考え方の人が存在する会社の中で価値観のズレやそれによる働き辛さを感じた人は少なからずいるかと思います。 |
<ミスの押し付け>
会社において自分はきちんと仕事を遂行しているのに上司や先輩のミスにも関わらず、正しいことをしている自分だけが一方的に叱責され、その後謝罪されることもなかったというケースです。
<正しく評価されない>
会社のために身を粉にして毎日夜遅くまで残業したのにも関わらず、会社の都合で残業と認められなかったり、自分ができること以上の仕事をこなしたにも関わらずその働きぶりを評価してもらえないなどのケースです。
<約束と違う>
昨日まで言われていたことと違う事や違う指示を言われ、結果的に自分が悪者になってしまうというケースです。
<不平等>
他の同期にはとても優しい上司が、自分にだけは何故か厳しかったり、ノルマを強要してくるなど、客観的に見て平等とは言えない扱いを受けるケースです。
友人との理不尽
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学校等の大人数の集団の過ごす中で、不可抗力にも近い嫌がらせを受けたり、自分の力ではどうしようもない状況に陥ったことがある人も多いのではないでしょうか。 |
<仲間外れ・いじめ>
学校、バイト先などで謂れのない無視をされる、悪口を言われる、また仲間外れにされたり、自分の居場所を奪われるなど、特に理由もなく精神的、身体的苦痛を与えられるケースです。
<約束を破る・嘘>
ずっと前から楽しみにしていた約束を当日にキャンセルされた、付き合いの長い友人に恋人を奪われた、嘘をついてずっと浮気をされていた、など信頼を置いていた人に予期せず裏切られ不信感を抱かざるをえなくなったケースです。
<お金関係>
ルームシェアをしているのにも関わらず毎月家賃を払ってくれない、貸したお金をいつまで経っても返してくれない、食事会で自分よりも多く飲み食いをしているのにも関わらず割り勘を強要してくるなど、自分ではどうしようもなく不利益を被ってしまったケースです。
家族・親戚との理不尽
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親の言動に対して幼い心ながらに疑問を抱きつつも言うことを聞かざるを得ない状況にいたり、義理の親、兄弟の発言に対して耐え忍ばざるを得ない状況に置かれている人も多いのではないでしょうか。 |
<親からのしつけ、暴言、暴力>
家庭のルールということで行動を制限されたり、親の気分や勘違いで謂れのない暴言を浴びさせられる、また身に覚えのないことで叱られるなど、最悪の場合、暴力を振われたことがある人もいるかもしれません。
<親戚からの嫌がらせ>
性格の不一致や生まれ育った環境の違い等が原因で、義理の兄弟や姉妹などから、人格を否定されたり、無視をされる他、日々の生活に対して過剰な指摘を受けることがあるかもしれません。
理不尽が生じる原因
理不尽が生じる原因について様々な角度から見ていきましょう。
外的要因
自分に一切非がなくとも理不尽な出来事が起きることがあります。これらは自分のとった行動に起因するものではなく、他人からもたらされたものや気候、災害などの環境に依るものもあります。
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上記における、会社での理不尽における<ミスの押し付け><約束と違う>、友人との理不尽における<仲間外れ・いじめ>、家族・親戚との理不尽における<親戚からの嫌がらせ>などの環境に依るものがこれに該当します。 |
心理的要因
他人からしたらさほど気にならないことでも自分では「理不尽だ」と強く感じることもあります。
またそのときの心身面の状態によっては普段それほど気にならないことでも「理不尽だ」と感じることがあったり、場面によっては自分が特に気にしていることに対して起きたからこそ「理不尽だ」と感じることもあるかもしれません。
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上記における、友人との理不尽における<約束を破る・嘘><お金関係>、家族・親戚との理不尽における<親からのしつけ、暴言、暴力>等の心理的な捉え方、考え方に依るものが該当します。 |
理不尽への対処法
どのように対処して乗り越えていけば良いのでしょうか。方法についてそれぞれ見ていきます。
環境を変えてみる
上記における外的要因に依るものがこれに該当します。
ミスを押し付けられたり、昨日までと言っていたことが異なる職場で理不尽さを感じていたり、学校におけるいじめ、親戚からの嫌がらせで悩んでいるのであれば、
思い切って職場を変えたり、登校のペースを落としたり、親戚と少し距離を取るなど、いま置かれている環境にこだわらず住んでいる場所、働いている場所、活動している場所を変えることも一つの方法です。
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環境を変えてみることでそれまで気がつかなかった視点や価値観を得ることができるかもしれません。 |
自己認知を変えてみる
「奥さんに頼まれてゴミを捨てに行ったために乗ろうと思っていた電車に乗れなかった」という状況の場合、
「電車に乗り遅れて時間をロスしまった」ではなく「ゆっくり考える時間を得ることができた」など
一つの物の見方にこだわらず別の視点を持つことも有効かもしれません。
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物事の捉え方を変える方法のひとつに認知行動療法があります。 |
認知行動療法は「認知を変えることで感情が変わり、感情が変わることで行動が変化する」という理論に基づいて認知の変容に重きを置いた第2世代の認知療法です。
例えば、仕事で上司にひどく怒られ続けた人が、
「こんなにダメな自分が他の仕事をしても意味がないかもしれない。まだ上司に怒られるかもしれない」
という認知を抱き、ひどく落ち込み、やる気を失った結果、会社に行けなくなってしまったとします。
この場合の認知から行動に至るフローは以下のようになります。
①認知:自分は仕事ができないダメな人間だ。自分が仕事をすると上司に怒られる。
②感情:落ち込み、無気力
③行動:会社に行けなくなる
上記のフローにおいて「別の考え方もできるかもしれない」と違う認知を捉えたのが次のパターンです。
①認知:仕事ができない自分にはまだ伸び代がある。上司が怒るのは自分に期待しているからかもしれない。
②感情:前向きな気持ち、向上心
③行動:会社に行けるようになる
上の例のように「なぜ自分はこのように考えたのだろう」という「自分の認知」を見つめ直すところから出発し、
「自分は〇〇と考えたが別の捉え方もあるかもしれない」「〇〇ではなく、△△というふうに捉えると気持ちが楽になるぞ」といったような違う捉え方に気がついたり、前向きな視点を持つことで自己の認知を変えていきます。
自己の認知が変わることで出来事に対して抱く感情が変わり、結果としてネガティブな感情やマイナス思考から解放されることが期待できます。
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また認知行動療法の中でも、思考のパターン(自動的な思考)に焦点を当てて認知の枠組みを変えていくスキーマ療法も有効です。 |
スキーマ療法は「自動思考」と呼ばれる、「早期に経験として自分の中に植え付いている思考パターンの枠組み」を変革していく療法です。
例えば・・・厳格な両親の教育の下に育ちそれまで学業の面で失敗をしてこなかった人が、大学に留年してしまい「自分は価値のない人間だ」というネガティブな考えが湧いてきたとします。
この場合、「大学に留年する=価値のない人間になること」
という自動思考が働いたことになります。
このような自動思考に対して物事の見方を変え、
「親の教育感から“大学に留年する=価値のない人間になること”」と考えていたが、そうではなく
「“大学に留年する=自由に使える時間が増えること”」という風に捉えることもできるかもしれない」
という風に認知の枠組みを変えるとポジティブな考えを持つことが可能になります。
上で述べた認知行動療法の「認知を変える」という工程を深掘りし、自分の過去に遡り「こういう経験があったから自分はこんな風に捉えてしまうのか」という自分の思考パターンに気がつくことで、
固定された視点から解放され多角的な視点を持つことができるようになります。
他者への認知を変えてみる
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上で述べた認知行動療法を他者への認知に適応してみるのもひとつの方法です。 |
「あの人はなんて理不尽な人なんだ」と決めつけずに「もしかしたら私と会う前にたまたま大きな出来事に遭遇してしまったのかもしれない」と別の視点から他者を捉えることで、その人への認知を変えることができます。
まとめ
今回は「理不尽」という概念と生じる様々な場面とそれぞれの対処法について紹介しました。
「理不尽」は社会で生きていく上では避けることができないものなので、「どのように避けていくか」ではなく「どのように上手に向き合っていくか」を考えることが大切になります。
記事の中では3つの対処方法を紹介しましたが、適正な対処法は個人によって異なります。
様々な方法を試していくとともにその時々に合う対処法を見つけてください。