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効果的な「うつ(鬱)の気分転換」とは?気分を変えるための8つの手立て

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現代では、仕事や学校において、それまで積み重ねてきた「我慢」や「ストレス」に疲れてしまい、ある日突然気分が落ち込み、それ以降なかなか気分が晴れず、予期せぬ大きな出来事によって塞ぎ込んだ気持ちになってしまう人も多いかと思います。

 

今回はそんな気分が落ち込んだときの気分転換の方法と、そもそもうつ(鬱)とは何なのかについて詳しく述べていきます。

うつ(鬱)の気分を晴らすには?

晴々としない気持ちを抱えつつも、忙しい毎日の中で時間に身を任せて、気分が晴れることをなんとなく待っていたり、気晴らしする方法を模索できずに過ごしてきた方も多いのではないでしょうか。

公認心理師の平井恭平アイコン 以下では、憂鬱な気分を晴らすために、日常生活の中で出来る具体的な気分転換の方法を紹介していきます。

自然に触れてみる

毎朝の電車通勤や高層ビルなどの無機質な人工物に囲まれる生活を送っていると、無意識のうちにストレスを感じてしまうものです。

 

都会の喧騒や見慣れた景色から距離を置いて、非日常を感じるためにも、近所の森林や遠くの山に足を運んで自然の中に身を置いてみてはいかがでしょうか。

公認心理師の平井恭平アイコン 普段慣れ親しんでいる都会の景色から離れて、森や川などの自然と触れ合うことで、日々の悩みや憂鬱な気分から解放されるかもしれません。

行ったことのない場所を訪れる

毎日同じ景色、同じ場所、同じ食べ物など変化が少ない環境の中で過ごしていると、新たなイベントは起こりにくくなってしまい、心も気分も停滞しがちになっていまいます。

 

心に新しい風を取り入れて空気の入れ替えを行うためにも、たまの休日に少し遠くへ足を伸ばしてみたり、周辺の行ったことがない場所へ足を運んでみてはいかがでしょうか。

公認心理師の平井恭平アイコン 学校や仕事で忙しくて中々難しいという人は普段の通学・通勤ルートを変えてみたり、道中にある訪れたことがないカフェを利用してみるなど、日常生活の中で気軽にできることから始めても良いかもしれません。

芸術鑑賞・創作活動を取り入れる

複雑な計算や論理的思考を司る左脳を使うことが多い現代では、感覚や感性を司る右脳を刺激する機会が少なく、脳への負荷が偏って、知らず知らずのうちに脳を疲れさせてしまいがちです。

 

そんなときは音楽、絵画、映画などの芸術を鑑賞したり、自分で何かを創作をしてみてはどうでしょうか。

 

芸術鑑賞、創作活動を通して普段あまり使うことが少ない右脳を刺激することで気分転換にもなる他、悩みから距離を置くことが期待できます。

公認心理師の平井恭平アイコン ここに最近ではインターネット上で映像コンテンツを配信するサービスも増えてきているのでそれらを活用しても良いかもしれません。

新しい物を買う

毎日見る部屋の風景、普段使っている身の回りの物に変化がないと、日々の生活の中で感じる刺激も徐々に少なくなってしまいます。

 

そんなときは思い切って日用品を買い替えたり、学校もしくは職場で使用する道具を買い替えてみてはどうでしょうか。

公認心理師の平井恭平アイコン 普段見ている部屋の景色や目に入る風景が変わることで毎日の暮らしに嬉しい刺激が増えるかもしれません。

新しいことを始めてみる

何も予定がない休日を過ごしたり、自宅と学校もしくは会社をただ往復するだけの日常生活を送っているだけでは、得られる刺激も少なく、気分が停滞してしまいます。

 

そんなときは「挑戦してみよう」と思っていた習い事や、新しいことを思い切って始めてみてはいかがでしょうか。

公認心理師の平井恭平アイコン 休日の過ごし方が変わるだけでなく、平日における休日に向けての気持ちの改善も見込め、関わる世界が広がることで幾つもの良い刺激を得られるかもしれません。

誰かと会話をする

ひとりになって頭の中であれこれと考えを巡らせていても、濁った思考が益々滞留してしまいがちです。

 

そんなときは信頼できる誰かと話をして、悩みを打ち明けて心の負担を減らしたり、助言をもらうことで違った視点を取り入れてみてはいかがでしょうか。

公認心理師の平井恭平アイコン ひとりではなかなか解決できないことでも、心を許せる他者と会話をすることで心が軽くなったり、新しい視点を得られたりするだけでなく、安心感や満足感が得られることもあります。

身体を動かしてみる

気分が晴れないからといって、じっと部屋で閉じこもっていても、それだけで心が晴れることはなかなか難しく、逆にますます気分が落ち込んでいってしまうこともあります。

 

そんなときはじっとするのをやめて、運動を取り入れて気分をリフレッシュしてみてはどうでしょうか。

 

運動といってもジムに通う必要はなく、自宅周辺を走ったり歩いたりするだけでも十分な運動になります。

 

身体を動かすことは気分転換になるだけでなく、運動による疲労によって睡眠の質の改善も見込めます。

公認心理師の平井恭平アイコン ここに最近では自宅で出来るヨガや筋肉のトレーニングを紹介しているメディアもあるので、天候に恵まれなかったり外出することが難しい人は室内での運動を試してみても良いかもしれません。

自分の認知を見つめ直してみる

抱えている悩みを解決しようとするあまり、同じ側面ばかり眺めていると他の見方をすることが難しくなり、結果的にひとつの思考に縛られてしまいます。

 

そんなときは一度立ち止まって自分の認知の仕方を見つめ直してみてはどうでしょうか。

公認心理師の平井恭平アイコン 自分の認知を変える心理療法のひとつに認知行動療法というものがあります。

こちらのページでも紹介されているように、これは「認知を変えることで感情が変わりそれによって行動が変容していく」という近年注目を浴びている心理療法です。

公認心理師の平井恭平アイコン 認知を変えることで物事の捉え方が変わり、心が軽くなったり、気持ちにゆとりが生まれるかもしれません。

うつ(鬱)を引き起こしやすい因子(ストレス)

ここまでうつ(鬱)な気分を晴らす方法をご紹介しましたが、そもそもうつ(鬱)な気分は何が原因で生まれてくるのでしょうか?

公認心理師の平井恭平アイコン 例えば次の漫画のように、仕事での予期せぬ失敗があると「自分はダメだ…」なんて気持ちが強くなって、うつ(鬱)な気分が引きこされますよね。

漫画1


漫画2

漫画の主人公のように、一度うつ(鬱)な気分になるとそこから切り替えるにはなかなか大変。

 

だからこそ、ここからは、うつ(鬱)気分になるのを防ぐことも考えていきましょう。まずは、うつ(鬱)気分を引き起こす、代表的な理由を見てみましょう。

長期間の無刺激な環境

何も変化がない学校や職場、何も変化がない休日など、刺激が少ない環境は脳内ホルモンの分泌を妨げる原因になり、結果的にうつ(鬱)を引き起こしてしまう可能性があります。

公認心理師の平井恭平アイコン 変化のない日常に慣れてしまうと、新しいことを始めたり、遠出をしたり、気分転換になる行動をする意欲もいつの間にか薄れてしまうものです。

ネガティブな環境の変化

自分の意思に反した転校や会社での異動など自分にとってマイナスな環境な変化もうつ(鬱)を引き起こす因子になってしまいます。

公認心理師の平井恭平アイコン 意図しない環境の変化においては、新しい環境に順応することに必死になり気分転換をする余裕も失いがちになるものです。

対人関係

学校でのクラス替えや職場の人事異動、引越しなどにより、関わる人間が変わることはよくあると思います。

 

しかしそれらは必ずしも自分にとって良い影響を及ぼすとは限らず、時には関わりたくない人と関わらざるを得ない状況になり、それが原因でうつ(鬱)を引き起こしてしまうこともあります。

公認心理師の平井恭平アイコン 誰かに悩みを吐き出して気分転換ができたら良いですが、人間関係の悩みは他人に打ち明けることにハードルが高く感じる方も多く、一人で悩みを抱えてしまいがちです。

季節の変化

気圧の変化を伴う季節の変わり目に体調を崩してしまう人も多いかと思います。

 

外から見てもわかりやすい身体の不調はもとより、気圧の変化等で脳内ホルモンの分泌が乱れてしまうとうつ(鬱)を引き起こしやすくなってしまいます。

公認心理師の平井恭平アイコン 特定の季節に限らず気候、気圧の変化によって様々な影響を知らず知らずのうちに受けてしまいがちです。

急激な変化を伴う出来事

身内の不幸や予期しない病気、身体の変化など今まで思いもしていなかったような急激な変化に苛まれたことがある人も多いと思います。先ほどの漫画のケースなんかも、仕事の失敗による自己評価の急激な変化と言えそうです。

 

それが自分にとってプラスな変化であれば良いのですが、マイナスな変化である場合はうつ(鬱)を引き起こすきっかけになる可能性があります。

公認心理師の平井恭平アイコン 特に間もない時期は、急な変化を受け入れることに必死で、自分でも気がつかないうちに心に見えない負担をかけてしまいがちです。

ここまでご紹介した5つのケースは、うつ(鬱)な気分を引き起こすきっかけになります。万が一、どれかのケースが起きた場合は、冒頭にご紹介した気分転換の方法を試してみてください。

うつ(鬱)とは

ここまでうつ(鬱)な気分について述べてきましたが、そもそもうつ(鬱)とはどういったものなのでしょうか。本質的な部分への理解も深めておきましょう。


辞書によると「うつ」とは「うつ【鬱・欝】 気のふさぐこと。」と記述されています。


うつ(鬱)の種類と診断基準

うつ(鬱)を含む精神疾患は大きく分けて

 

  • 抑うつ障害(気分が落ち込むうつ(鬱))
  • 双極性障害(気分が落ち込んだりハイになったりするうつ(鬱))

 

の2つに分類されますが、ここでは抑うつ障害(気分が落ち込むうつ(鬱))について詳しく述べていきます。 

公認心理師の平井恭平アイコン DSM-5(アメリカ精神医学会)による、うつ(鬱)病の診断基準は以下の通りです。

 


以下の症状のうち5つ (またはそれ以上) が同一の2週間に存在し、病前の機能からの変化を起している。

 

これらの症状のうち少なくとも1つは、1 抑うつ気分または 2 興味または喜びの喪失である。

  1. ほとんど1日中、ほとんど毎日の抑うつ気分。
  2. ほとんど1日中、ほとんど毎日の興味、喜びの著しい減退
  3. 食事療法中ではない著しい体重減少あるいは体重増加。またはほとんど毎日の食欲の減退または増加。
  4. ほとんど毎日の不眠または睡眠過多。
  5. ほとんど毎日の精神運動性の焦燥または制止 。
  6. ほとんど毎日の易疲労性、または気力の減退。
  7. 無価値観、または過剰あるいは不適切な罪責感がほとんど毎日存在
  8. 思考力や集中力の減退、または決断困難がほとんど毎日存在
  9. 死についての反復思考、反復的な自殺念慮、自殺企図、または自殺するためのはっきりとした計画。

B: 症状は臨床的に著しい苦痛または社会的・職業的・他の重要な領域における機能の障害を引き起こしている。

C: エピソードが物質や他の医学的状態による精神的な影響が原因とされない。

参考:【日本精神神経学会(日本語版用語監修) 高橋三郎・大野裕(監訳):DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル p160 医学書院2014 】


 うつ病/大うつ病以外にも持続性抑うつ障害(気分変調性障害)というものもあります。

公認心理師の平井恭平アイコン うつ病/大うつ病との違いは、うつ病/大うつ病が二週間以上継続するのに対して、持続性抑うつ障害(気分変調性障害)は軽度のうつ(鬱)状態が2年以上継続しているという点が異なっています。

うつ(鬱)の原因

うつ(鬱)の原因の一説としてドーパミンやセロトニン、ノルアドレナリンといったモノアミンと呼ばれる神経伝達物質の分泌が少なすぎることが原因と言われています。(これをモノアミン仮説と言います)

 

かつて抗うつ薬の働きを調べるため動物抗うつ薬を投与したところ、モノアミンの増加がみられたことからこの仮説が提唱されました。


アメリカの精神科医ロバート・クロニンジャー(1944年〜)によると

  • ドーパミンは新規追求(新しい刺激を求める)
  • セロトニンは危害回避(危険なことを避けようとする)
  • ノルアドレナリンは報酬依存(報酬に魅力を感じる)

とそれぞれ関連があるとされています。


公認心理師の平井恭平アイコン ドーパミンの新規追求の側面からも、うつ(鬱)などの気分の落ち込みには新しい刺激や変化が必要であることがわかります。うつ(鬱)気分を感じたら、気分転換のための行動を起こすことはこの点からも大切だと言えますね。

まとめ

今回はうつ(鬱)の概要と、気分転換をはじめとするその対処法について紹介しました。

 

気分を向上させたいと思いつめるあまり特別な解決方法を模索してしまいがちですが、特別な方法を探そうとするのではなく、手軽にできることからゆっくり始めてみることが大切です。

 

しかしながら自分に合う対処方法は人それぞれなので、自分の周りにある資源を最大限に活用して様々な方法を試しながら、日常生活に良い刺激を取り入れて充実した毎日を送ってくださいね。

仕事の悩みうつ気分
この記事の監修者
公認心理師、心理検査士、高校教諭(数学・理科)。
この記事の編集者
ベネッセコーポレーションで6年間教育事業に従事したのち、ライフキャリアの充実を支援するためにRELABELを創業。
この記事のクリエイター
イラストレーター兼漫画家です。 主に、日経スペシャル カンブリア宮殿(テレビ東京)の作画担当
認知行動療法とは

RELABELのベースとする考え

2010年から保険対象となった科学的実証のある心理療法。心を追い込んでしまうのは、自分特有の「思考の癖」があるから。小さな行動を起こしながら「思考の癖」を修正し、つらさを減らしていく療法です。

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